ASAの、ただのクルマ好き 第211回 本革シートってビニールシートと変わんないんです

操作メニュー
投稿日時
2019/07/31 17:39
[写真]

本革シートは蒸れて暑い

というのは変な話!?


7月後半になって、急に夏らしいというか猛暑続きでヘロヘロになっているASAです。職業柄、いろいろなクルマに試乗するのですが、この時期にあまり乗りたくないのが本革シートのクルマです。で、最近のちょっと高級なクルマは大体が本革シート仕様。参っちゃいますね。


正直言って、エアコンを入れていてもお尻や背中のシートと密着している部分が蒸れて暑くなるんですね。で、蒸れないようにとの工夫かシート表面に細かなパンチングの穴が開いていて通気性をアップしている本革シートが多いようです。


また、ちょっと高級なクルマではシートベンチエ―ションが装備されていて、その穴からエアが出てきて背中やお尻を冷やしてくれるものもあります。これ、確かに効くんですが、常時使っていると今度は冷えすぎて腰や背中が痛くなることがあるので注意が必要です。



[写真]

大体、本革というのはクルマの素材としての使用要件にはまったくマッチしていないんです。耐候性がなく劣化しやすい。伸び縮みする。独特のニオイがある。メンテナンスが大変と、あまりいいことありません。


聞いた話では、ダッシュボードに本革を貼り付けたタイプでは、本革の縮みによって、ダッシュボードが歪んでしまうようなケースもあるので、試作段階でかなりの強度を確保する必要があるんだそうです。


本来、本革というのは吸湿性が高く本革のシャツなどはヒヤッとして気持ちいいんです。つまりちゃんとした用途で使用すると快適な素材になるということなんですね。


えっ?じゃあなんで本革シートって、蒸れて暑くなるのと疑問に思いませんか? その答えは簡単。ほとんどの本革シートは、本革を使ってはいても本革本来の機能は完全に潰してしまい、単なる見せかけだけの高級感を演出する素材として使われているからなんです。


どういうことかって? 



[写真]

それは、先に書いたように本革はクルマの素材としては適合性が低いため、それをカバーするためにいろいろな加工をしてあるからです。


最近の本革シートのクルマに乗っても、ほとんど本革のニオイってしませんよね? あれは、革のニオイを抑えるために表面に樹脂コートがしてあるからです。このコートをすることによって、革の色が衣服に染みついたり、飲料や食べこぼしの汚れからシートを守ることができるんですね。


さらに、人の乗り降りによって本革表面は常に擦られているのですが、この擦り減りも樹脂コートによって低減するんです。


オー、樹脂コートってすごいじゃん、というのは確かに正しいんですが、これはつまり本革の表面をビニールでコーティングしているのと同じ。つまり、高級に見えるビニールシートに座っているのとほとんど変わりありません。


ビニールシートとほぼ同じなのだから、吸湿性は望めず真夏のドライブでエアコンを使ったとしてもお尻や背中が蒸れてしまうのは当然のこと。


で、その蒸れを少しでも解消するために表面に細かな穴を開けて体の蒸気を逃がし、さらにシートベンチレーションを付けて涼しくしようというのだから、本当に本末転倒な話なんです。


じゃあ、表面の樹脂コートをやめて、家のソファーで使っているような風合いの本革にしたらいいんじゃないの?と思われるに違いありません。


確かにのとおりなんですが、そうすると、ニオイや色落ち、耐候性などの問題が出て、クレームの対象になってしまう可能性大なんですね。


以前BMWが確かアニリン仕上げの茶色いバッファローのバックスキンタイプのシートをオプション設定したことがあったそうなのですが、抜群の座り心地や快適性だったものの、革の染め色が衣服に染みつくとのクレームで、それ以降この素材を使用していないとか。


ちなみに、廉価版のクルマに採用されての本革シートの色は、実は染ではなく塗装です。それよりも、表面のシボ(革の目)もプレス加工なんです。


多くの本革(牛革)は表面に多くのキズがあって、そのままの状態ではキズだらけの素材になってしまいます。じゃあどうするのかって? まず、表面にあるキズをサンドペーパーのようなものですべて削り落とすんです。


で、表面をツルツルにしたら、シボをプレス加工で表面に施すと、ハイ、キズのないキレイな革の一丁上がり。そのあとに表面に塗装を施してさらに表面保護の樹脂加工をする。こういった加工をしているからこそ、そこそこの値段で本革シートが作れるんですね。


ちなみに、超高級車のマイバッハに使用されているような本革シートの革は、超高級のなめしを施したアニリン仕上げ。革の表面には虫刺されの小さな穴すらない完ぺきなキズなしのものを使用しているそうで、それこそ超希少な本革だそう。


もちろん、良い状態に保つためには、しっかりとメンテナンスをしなければならないんですが、お抱え運転手がいて常にクルマをキレイに保っているようなクルマであれば、なんの問題もないってことでしょう。



やはり、普通の人は無理して夏暑く冬は冷たいビニール加工の本革シートではなく、ファブリック地のシートを選んだ方が快適なハズ。あっ、合成皮革の本革っぽいヤツなら、快適性も高くていいんじゃないでしょうか。